化物語のヒロイン戦場ヶ原ひたぎ。私は彼女が大好きです。
戦場ヶ原の誕生日は7月7日。いわずと知れた七夕です。
化物語のほかのキャラクターは誕生日が不明なのに、なぜ戦場ヶ原だけはっきりしているのでしょうか。
理由は簡単です。
戦場ヶ原が織姫で、阿良々木が彦星という象徴なのです。
たったのそれだけかと、思う人も多いでしょう。
そのとおり、それだけです。
七夕はエンディングのテーマにもなっている通り、この作品と大きな関わりがあります。
エンディングテーマの「君の知らない物語」では織姫と彦星についての歌詞がありますが、明らかに戦場ヶ原が織姫役でしょう。これは、まぁ原作とは関係の無いものです。
もっと原作に沿った理由付けをすると
織姫は別名「細蟹姫(ささがにひめ)」とも呼ばれます。
ここでいう細蟹とは蜘蛛のことです。
織姫はもちろん織物の姫なわけですから、蜘蛛とはまさに「糸」でつながっているわけです。
なぜ、細蟹(ささがに)が蜘蛛なのでしょう。
それは和歌において「笹が根の(ささがねの)」という枕詞は蜘蛛を導くからです。「笹が根」が転じて「細蟹(ささがに)」に変わった訳です。
忍野メメも言っているように、「名前は重要」なのです。名前の由来がその本質をあらわしています。
また「笹が根」というのですから、七夕と「笹」もつながりがあります。
また和歌の話になりますが、衣通姫の歌で
我が夫子(せこ)が来べき宵なり笹が根の蜘蛛の行ひ今宵しるしも
というものがあります。意味は
我が夫がもうすぐ来るであろう。なぜなら笹の根に蜘蛛がいて教えてくれるからだ。
つまり、和歌の世界において「笹が根の蜘蛛」という表現は思い慕うあの人に会える予兆という意味であるわけです。
ではここで化物語の構成について考えてみると、戦場ヶ原のセリフに「でもね、これまでの私の人生はあまり幸福とは言えないものだったけれど、不幸だからこ そ阿良々木君の気を引けたと言うのなら、それで良かったと思うの。それくらい私は、阿良々木君に参ってしまってるの。」と二人で手をつなぎながら、また、 ヴェガ―織姫を眺めながらいうシーンがあります。
つまり、「ささがに」=蜘蛛を見れば恋人に会えるという昔の考えそのままに、戦場ヶ原は「蟹」に出合い阿良々木に逢うことができたわけです。
「細蟹」と「笹が根」のどちらが先かはわかりませんが、戦場ヶ原にとっては、織姫というポジションはこの上なく最適なものであると思われ、この作品の完成度の高さを思い知らされます。
おそらく、原作者の西尾氏はこのことを踏まえたうえで、戦場ヶ原と「蟹」を引き合わせた訳です。
表面上は「重石蟹」→「想いし蟹」→「おもいし神」→「想い・しがらみ」という関連付けを行いつつ、こんな裏があったとは・・・かっこいい。
そういえば、「しがらみ」ってつまり、「柵」→「短柵」と関係があるのかな。
もう少し調べてみる必要がありそうです。
[8回]